公立小野町地方綜合病院企業団病院事業会計における決算についてお知らせします。
概要
A.一般的事項
当病院は、永年、慢性的な医師不足に悩まされておりますが、令和2年度においても常勤医師2名という厳しい体制で地域の安全安心を確保するため運営してきました。新型コロナウイルス感染症は全国的に感染状況が悪化し、県内でも専用病床を確保するため、体制整備が必要な状況となりました。こうした中、当病院では、ニーズに応じた医療提供体制を確保し、患者や家族をはじめ、病院に関わるすべての人たちを感染から守ることを目的として、様々な院内感染防止対策に積極的に取り組みました。
〇院内感染防止対策
感染症の伝播リスクを最小限に抑えるため、正面玄関にて、来院者への検温、問診の実施や院内の定期的な消毒作業と換気を行うとともに、入院患者への面会制限や入院前のPCR検査の実施など、現状の医療体制を維持、確保するため感染防止対策を行いました。また、令和3年3月には、当病院で初めて通院患者に新型コロナウイルス陽性者が確認され、外来診療を4日間休診とし、院内の徹底した消毒作業、関係職員のPCR検査を行い、院内感染のリスク解消、防止に努めました。
〇地域外来(発熱外来)の設置
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止や医療体制の維持を図るため、発熱や咳、倦怠感等の症状など、感染の疑いのある方を田村医師会の医師が輪番制で診察する「地域外来」を町からの委託を受け設置しました。また、保健所からの依頼により、新型コロナウイルス感染症の陽性患者と接触があり、濃厚接触者となった方への検体採取を行う帰国者・接触者外来を併せて設置しました。
その他には、新型コロナウイルス感染症対策の一つとして入院患者との面会制限を実施していますが、県内の感染状況を考えると今後も長期化することが予想されます。患者と家族の不安を少しでも解消するため、対面することなく患者と家族とのコミュニケーションを取る手段として、タブレット端末を使用した「ライン面会」を開始しました。
こうした中、当病院では、継続した感染対策を実施しながらも平成30年10月に策定した「病院機能整備プラン」に基づき、地域中核病院の役割を果たすため、積極的に経営改善に取り組んでまいりました。
〇地域包括ケア病床の開設
令和2年4月より、地域包括ケアシステムの中核病院としての役割を果たすため、一般病棟30床を地域包括ケア病床に転換しました。
急性期治療を終了し、直ぐに在宅や施設へ移行するには不安のある患者、在宅、施設療養中から緊急入院した患者に対して、在宅復帰に向けて診療、看護、リハビリを行うことを目的とし、在宅復帰をスムーズに行うため、「在宅復帰支援計画」に基づいて主治医、看護師、専従リハビリスタッフ、在宅復帰支援担当者(医療相談員)等が協力して、効率的に患者のリハビリや在宅復帰への支援を行っております。
〇在宅医療の強化
患者サポート室内に在宅事業推進部門を設置し、在宅療養支援病院として、近隣の医療機関と連携を図りながら、24時間体制での訪問診療、訪問看護に対応しております。さらには、リハビリスタッフを増員しての訪問リハビリの開始や緊急往診、緊急入院受入れ、在宅看取りなども積極的に行い、より良い地域包括ケアシステムの構築を目指し、在宅医療の強化に取り組みました。
〇「こころの診療科」の診療開始
令和2年6月より、当病院にはこれまでなかった精神科系の診療科を開始しました。お子さんの発達障害や高齢者の認知症等に対応し、病気の早期発見や早期治療に繋げられます。また、ストレス社会と言われる現代において、働き盛りの現役世代が抱える精神的な不調にも対応しております。
〇その他の取り組み
病院事業や地域医療に関心を持つ方々からの意見や要望をお聴きし、利用者の立場に立った適切な医療を追求するとともに、サービスの向上や病院運営に反映させるために病院モニター会議を開催しました。また、新型コロナウイルス感染症の影響で、暗いニュースの多い国内情勢の中で、患者や来院される方への心の癒しを提供するため、施設内に展示スペースを設け、作品を展示しました。
今後は、地域の中核病院として安全で質の高い医療を提供するため、令和3年12月の電子カルテ本格稼働や地域包括ケアシステムの活動としての近隣医療機関、介護施設等に積極的に情報発信をし、円滑な連携を図っていきます。また、引き続き常勤医師の確保を最重要課題として、診療体制の充実に取り組んでまいります。
B.決算の概要
令和2年度の収益的収支は、総収益2,081,301千円に対し、総費用が1,904,252千円で、収支差引で177,049千円の純利益となりました。損益では、前年度の純損失88,116千円に対し265,165千円の増となりました。
資本的収支は、収入32,977千円に対し支出が41,913千円となり差引不足額は8,936千円となりましたが、不足額は、平成26年度医療機器分に係る企業債の償還が完了したことから、前年度(不足額 27,611千円)より18,675千円減少しました。
令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により外来患者数は減少しましたが、地域包括ケア病床開設による診療単価及び入院患者数の増により黒字決算となりました。
◎収益的収支
収益的収入のうち入院収益は960,326千円で、地域包括ケア病床開設による診療単価の増及び患者数の増により前年度比213,445千円 28.6% の増となりました。外来収益については、新型コロナウイルス感染症の影響による患者数の減により前年比63,749千円 9.2% の減となりました。また、医業外収益では、新型コロナウイルス感染症対策補助金等の増により前年比30,043千円 10.4%の増となりました。
収益的支出のうち給与費は1,025,712千円で、地域包括ケア病床開設によるリハビリ職員等の増により、前年比23,911千円 2.4%の増となりました。材料費は345,417千円で外来患者数の減少伴い薬品費が減少したことで、前年比35,523千円 9.3%の減となりました。
また、訪問看護収益は34,741千円で、前年度比4,182千円 13.7%の増で、訪問看護費用についても36,875千円で前年度比2,380千円 6.9%の増となりました。訪問看護事業の収支は、2,134千円の赤字となりましたが、訪問回数の増により赤字額は前年度(赤字額3,936千円)を1,802千円下回りました。
<資本的収支>
収入総額は32,977千円で、医療機器等に係る企業債借入額が減少したため、前年度比41,384千円 55.7%の減となりました。支出総額は41,913千円で、医療機器の購入及び企業債償還金の減に伴い前年度比60,059千円 58.9%の減となりました。
収入から支出を差し引いた不足額8,936千円は、過年度分損益勘定留保資金と当年度分資本的収支調整額で補填しました。
関係帳簿(PDFファイル)
◆令和2年度 損益計算書
◆令和2年度 貸借対照表
◆令和2年度 キャッシュフロー計算書